第25回インパクト・サロン開催報告

9月29日(水)、第25回インパクト・サロン「日本におけるSIB発展の可能性」を開催しましたのでご報告します。専門的な内容にもかかわらず、セミナーには60名以上の方に参加登録を頂き、非常に充実した議論を行うことが出来ました。お忙しい中、ご登壇頂いた日本政策投資銀行(DBJ)の北栄さんと東條さん、そして参加者の皆さんに改めてお礼申し上げます。

グローバルなSIBの動向

セミナーでは、まず当研究所の小林主任研究員から、グローバルなSIBの動向について紹介がありました。

現在、SIBは全世界で214件が組成され、民間資金調達額は4億9600万ドル以上に達しています。対象領域も、当初の再犯・非行予防や薬物中毒予防などの分野から拡大し、雇用・職業訓練、子ども・家族の福祉、ホームレス支援、保健・医療、教育などの多様な分野に発展しています。日本でも、2021年に内閣府が成果連動型資金提供(PFS)ガイドラインを策定し、PFS/SIBが本格化しました。2019年度末時点で50自治体により59案件が組成されており、さらにその数は拡大しています。日本のPFS/SIBは保健・医療分野が中心で、海外で発展している「ホームレス支援」や「貧困削減」などの分野での取り組みは見られず、またターゲット層も比較的広範囲にわたっていて、海外のように低所得コミュニティや移民・難民などの社会排除層に限定されないところに特徴があります。また、日本に独自の取り組みとして「地域活性化・街づくり」分野にPFS/SIBが導入されているのも特徴的だと言えるでしょう。これが、海外から見てどのように評価されるか注目されます。

特に、海外で注目を集めている分野が就業・キャリア支援分野です。支援対象者が、就職後に所得に応じて返済するキャリア・インパクト・ボンドをはじめ、革新的な取り組みがなされています。就業・キャリア支援は、新型コロナウィルス感染拡大で深刻な打撃を受けた非正規労働者に対する支援策として注目を集めており、さらにデジタル化の進展など急速に進む産業構造の変化の中で、誰ひとり取り残さないという観点から労働力の移行を推進する手段としても重要です。日本でも、今後、検討が進められる分野の一つだと言えるでしょう。

日本政策投資銀行の取り組み

続いて、DBJの東條さんから「日本におけるSIB発展の可能性」として、主にDBJの取り組みの紹介がありました。

DBJは、2019年4月にSIB検討チームを立ち上げ、複数の部署が連携してSIBの導入を開始しました。その後、英国で多くのSIB組成実績を持つBridges Fund Managementとアライアンスを締結し、さらに日本のドリームインキュベーターと業務連携を行い、同社が組成するNext Riseソーシャル・インパクト・ファンドに出資するなど、積極的にSIBへの取り組みを推進してきました。現在では、SIBに関する内外の動向調査、地方自治体向けPFS/SIB導入に向けた伴走支援、SIBの特色に応じたフィナンス・スキームの提案など様々な分野で業務を展開しています。2021年9月には、法務省ソーシャル・インパクト・ボンドの案件形成も行いました。さらに、内閣府の委託事業として、PFSプラットフォームを運営するなど、日本におけるPFS/SIB普及・発展における中核的な担い手として今後活動していくことが期待されています。

環境インパクト・ボンドの可能性

最後に、DBJの北栄さんから「環境インパクトボンドの可能性」について紹介がありました。

環境インパクト・ボンドとは、水害などの防災や自然環境保護などを対象としたPFS/SIB手法です。これまでに米国では数件の環境インパクト・ボンドが発行されています。特徴は、通常のPFS/SIBが政府・自治体や財団が資金を提供するため「ボンド」という名称をつけていながら実際には債券として発行されていないのに対し、環境インパクト・ボンドは公募債券として市場で発行され、短期間で完売するなど人気の高い金融商品となっている点です。公募債ですから発行額も大きく、大規模な資金調達が可能となっています。

セミナーでは、環境インパクト・ボンドの仕組みの説明と、事例紹介として米国DC Waterのグリーン・インフラ整備事業、アトランタ市のグリーン・インフラ整備事業の2件が紹介されました。それぞれ、公募債として発行されたために流動性が高く、また元本毀損リスクが小さいことから、投資家の応募が殺到した成功事例です。

日本においても、近年、台風や集中豪雨による自然災害が深刻化しています。自治体の財政が悪化している中、成果連動型で民間資金を調達して防災に取り組む環境インパクト・ボンドが導入されれば、有力な資金調達手法となることが期待されます。残念ながら、現在の地方財政法に基づく地方債制度では環境インパクト・ボンドの発行を行うことが出来ませんが、今後、何らかの形で環境インパクト・ボンドのような資金調達手法が検討されていくことが期待されます。

セミナーでは質疑応答も活発に行われました。PFS/SIBに対する関心の高さが伺えます。社会的投資研究所としては、引き続きPFS/SIBをテーマとしたセミナーを開催していく予定です。引き続きよろしくお願い申し上げます。

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