ブログ

GIINが提唱するインパクト投資の「中核的特徴」

小林 立明 | 2019.04.04


GIINとは?

GIIN(グローバル・インパクト投資ネットワーク)とは、2008年、インパクト投資のコンセプトが提唱された直後に設立されたグローバルなネットワーク組織です。10年以上にわたる活動を通じて、GIINはインパクト投資の発展に大きく貢献してきました。具体的には、インパクト投資の標準的な評価指標であるIRISメトリックスの開発、インパクト投資対象企業の報告・格付けスタンダードであるGIIRSの開発、さらに、インパクト投資ファンドのグローバル・データベースの開発やインパクト投資家のグローバル・ネットワーク構築などです。このように、GIINは、常にインパクト投資の発展をリードしてきました。

このGIINが、今回、インパクト投資の「中核的特徴」を公開しました。GIINによると、「中核的特徴」は、従来、GIINが提唱してきたインパクト投資の「定義」を補完するものとの位置付けです。今後のインパクト投資のあり方を考える上で興味深い提案ですのでご紹介しておきます。

インパクト投資の「定義」

まず、インパクト投資の定義を確認しておきましょう。インパクト投資とは、「経済的リターンとと共に、ポジティブで測定可能な社会・環境的インパクトを生み出すことを意図してなされる投資」と定義されます。この定義のポイントは以下の4点です。

  • 明確な意図
    • インパクト投資には、社会・環境的インパクトをもたらそうという明確な意図があります。この点で、インパクト投資は、ESG投資やサステナブル投資、ネガティブ・スクリーニング投資とは異なります。
  • 経済的リターンの追求
    • インパクト投資は、市場レートからそれ以下のレートまでの範囲はありますが、経済的リターンを追求します。この点で、インパクト投資は、経済的リターンを求めないフィランソロピーとは異なります。
  • 多様なアセット・クラス
    • インパクト投資には、エクイティ、デット、メザニンなど、多様なアセットクラスがあります。
  • インパクト測定(Impact Measurement)
    • インパクト投資の最大の特徴は、投資がもたらす社会・環境面でのパフォーマンスを測定・報告することに投資家がコミットする点にあります。

これが、GIINが追求しているインパクト投資の定義です。実は、世の中には、上記の定義を満たさない投資商品が「インパクト投資」の名の下に流通しています。中には、通常の投資商品とほとんど変わらないのに、「インパクト投資ファンド」と称して販売している大手の金融機関もあります。しかし、これは「インパクト」のブランドを借りたマーケティングでしかなく、社会・環境面でのインパクトもなければ、そもそもこれら金融機関にインパクト測定を行う意思はありません。投資家の社会的関心にうまく漬け込んだ商品が増えていく中、GIINは、以上の定義を繰り返し強調し、様々なレポートや提言を通じて、インパクト投資の本来のあり方の浸透を図ってきました。

インパクト投資の「中核的特徴」

今回のインパクト投資の「中核的特徴(Core Characteristics)」は、この努力を踏まえて、GIINが、インパクト投資の定義を補完し、インパクト投資に最低限、期待される要件として提案するものです。策定にあたっては、全世界の主要なインパクト投資家から意見を聴取したとのことです。「中核的特徴」は以下の4つからなります。

  • 経済的リターンと共に、投資を通じてポジティブな社会・環境的インパクトに貢献しようという意図
    • 経済・インパクト両面で透明性の高い目標を設定
    • この目標を明示する投資テーマを設定し、目標を現実化する戦略を策定
  • 投資計画の策定におけるエビデンスとインパクト・データの使用
    • エビデンスに基づく投資ニーズの明確化と、投資の受益コミュニティの明確化
    • エビデンスを踏まえたターゲット層の設定、効果的な投資戦略の策定、ネガティブ・インパクトへの配慮、パフォーマンス測定のための定量的・定性的指標の設定
    • インパクト分析能力の絶えざる改善
  • インパクト・パフォーマンス管理
    • 投資サイクルに、改善のためのフィードバック回路を組み込み
    • インパクト目標達成におけるリスク管理
    • 投資に伴うネガティブ・インパクトの緩和努力
    • 投資家・投資先双方へのインパクト・パフォーマンス・データの開示
  • インパクト投資市場成長への寄与
    • 以上のインパクト投資の実践の程度を開示
    • インパクト目標、戦略、パフォーマンスを記述する手法とスタンダードの共有
    • 意思決定の際に、共同投資家や投資先のインパクト・マネジメントのパフォーマンスや質を考慮
    • プライバシーや知的所有権に抵触しない限り、ポジティブ・ネガティブ双方の学び、エビデンス、データを共有

以上です。この「中核的特徴」は、「インパクト投資」が投資商品の選択肢の一つになりつつある現状を憂い、社会変革に向けた明確な目標とマネジメント手法を持った投資家コミュニティとしての原点に立ち返り、このコミュニティを維持・発展させていくようコミットしていこうという宣言だと言えるのではないでしょうか。

これまで、インパクト投資は、「市場化」と「主流金融機関の参入」を通じた規模の拡大を志向してきました。しかし、この結果、インパクト投資がサステナブル投資の一商品として位置付けられ、インパクト投資が当初、目指していた貧困や環境汚染などへの問題解決に直接関わりのない分野からかけ離れてしまうという状況が生まれつつあります。今回のGIINの提案は、この状況に対して警鐘を鳴らしていると言う点で、重要な意義を持っていると思われます。

原文は、以下のサイトからご覧いただけます。
Core Characteristices of Impact Investing